姫(義母)も、(そして亡き義兄も)
会いに行くと、どんより暗い。
暗黒の魔王にすっぽり飲み込まれているようだ。
姫の半径2メートル四方は、真っ暗な闇に包まれているようだ。

眉間にしわよせて、
蚊のなくような声で、

〇〇が見つからない、
(病院)のご飯がまずい、
看護士さんがやってくれない、
すぐに疲れちゃうんだよ、
夜眠れない、etc、etc。

笑顔を見せない。
ありがとう、がない。

そして、
「もうすぐお迎えが来るよ」
と、それだけは、聞こえるようにはっきり言う。

夫(姫の次男)のたくさんの笑顔。
こうしてほしいと言われるままに、してあげる数々。
それでも足りない。

ねぇ、姫。
姫はしあわせではないの?
姫はどうすればしあわせになれるの?

ねぇ、姫。
五体不満足でも、
貧乏のどん底でも、
戦争ですべてを失っても、
それでも、「しあわせ」は、「そこ」にある。

しあわせは、
ほんとうは
与えられるものではない。
心の中に自分で作るもの。
だから、
財産、地位、名誉、家族、恋人、友人、健康、美貌、若さ、天候に恵まれていても、
ふしあわせだと感じる人がいれば、
それと真逆な人生で、より豊かなしあわせを感じることのできる人もいる。

ねぇ、姫。
美しい夕陽を見るだけで、涙がこぼれるんだよ。

ねぇ、姫。
ねぇ、姫。
ごめんなさい、姫。

姫は、口をあけて
しあわせが飛び込んでくるのを待っている。
それがありのままの姫なのに。

姫は毎日、
飛んでこなかったしあわせを数えて
悲しい気持ちになっている。
それがありのままの姫なのに。

姫がしあわせを感じられないとしても、それは
姫のせいではないのに。

ねぇ、姫。
ごめんなさい、姫。
いたらない嫁だね、わたしはいたらない。
姫をしあわせにしてあげられない。